中級〜上級者が緊張する原因「セルフフォーカス」を撃退する
こんにちは新庄かつやです。
「プロとして失敗するわけにいかない」というような、熟練者ならではのプレッシャーは、単なる緊張よりもかなり脅迫的なものとなります。
「自分の動きが注目されている」「自分の一挙手一投足が評価されている」と考えると、不安感や自意識が高まり、いつもの動きができなくなるのです。
このように、自分自身で「自分がどう動くのか」に注目してしまう状態を「セルフフォーカス」や「明示的モニタリング」とよび、それがつまり緊張の正体と言えます。
今回はこの「セルフフォーカス」をよく知り、本番で失敗してしまわないように何ができるのかを見ていきます。
- 本番でパフォーマンスが下がる理由
- セルフフォーカスの介入
- セルフフォーカスがなぜ悪影響になるか
- 効果的な改善方法
- 他人はどれくらいあなたを見ているか
- ルーティンは効果があるのか
- 考え過ぎを止める方法
本番でパフォーマンスが下がる理由
私たちは普段、慣れている行動は「オートパイロット」状態で行っています。
何かを食べる時にお箸の動き方を意識することはありませんし、家に帰るまでの歩く姿勢など考えたこともありません。
熟練者が簡単そうに演奏できるのは、すでに「よく行う行動」として演奏がオートパイロット化されているからです。
しかし、あなたのお箸の使い方を100人に鑑賞され、評価されるとすれば、いつも通り食べ進めることは難しくなります。「セルフフォーカス」状態になるためです。
セルフフォーカスの介入
コンテストや大勢の観客がいる状態、放送・録画されている状態、さらには自分の演奏や立ち振る舞いについて評価を下される、という状態で、
「はたして自分の演奏・振る舞いはうまくいっているのだろうか」
ということを考えてしまった時に、オートパイロットは解除されてしまい、すべて手動での操作になってしまいます。
特に、演奏のような高度なことができる人は頭の回転が速いので、どんな時も不安をぐるぐる巡らせるだけの能力が余ってしまっているのです。
これによって余計にセルフフォーカスが起こりやすく、制御できなかった場合には曲の構成ごと飛んだり、歌詞が詰まったり、頭が真っ白な状態になりかねません。
セルフフォーカスがなぜ悪影響になるか
オートパイロットで無意識に動作している状態と、意識的にひとつひとつ操作するの状態では、同時に処理できる情報に歴然の差があります。
複雑な動作を意識的にひとつひとつ考えて、さらに不安も巡らせている状態では、頭の処理がいっぱいいっぱいになってしまうのは当然です。
つまり「あれこれ余計なことを考えてしまう」ことにより、脳の処理が追いつかなくなり、パフォーマンスが落ちてしまうのです。
効果的な改善方法
では結局どうすれば「セルフフォーカス」を克服して、本番で良いパフォーマンスを発揮できるかというと、余計なことを考えないようにするということです。
めちゃくちゃ当たり前のことを言っていますが、これがなかなかできないんですよね。これができない限り緊張に悪影響を受け続けてしまいます。
ここからは、セルフフォーカス防止のための対策を見ていきましょう。
他人はどれくらいあなたを見ているか
「他人に注目されている」というプレッシャーからセルフフォーカスが起こりますが、その根本の部分が幻想であることをまず認識しておきます。
これを調べるために行われた面白い実験があり、
授業に遅刻した学生に罰として「すごくダサいTシャツ」を着せて、その学生に「あなたのTシャツがクラスの何人に気づかれたと思いますか?」という質問をしたところ、
遅刻した学生のほとんどが「半数以上の人に気づかれたのではないか」と答えましたが、実際にTシャツに気づいていたのは、その予想人数のたった半分の人達だけだった、というものです。
ようは、あなたのことを一番気にしているのはあなた自身なんですよ、ということです。
私が演奏で明らかなミスを犯して激しく落ち込んでいた時も、「気づいていなかった」という観客が多くいました。
ルーティンは効果があるのか
結論、あります。意外と合理的なんです。
2016年にハーバード大学が行った実験で、“人前で歌を歌う前にルーティンを行った人は、不安レベルが低く血圧の上昇が少なかった”ことがわかりました。
この実験で行ったルーティンは、①今の感情を絵にする。②その絵に塩をまく。③5秒数える。④絵をくしゃくしゃにしてゴミ箱に捨てる。というものでした。
が、この通りやる必要はありません。ルーティンがどのように精神状態を整えるのかを理解すれば、応用してどんな風にもできるからです。
ルーティンの効能
私たちが緊張・プレッシャーで心が乱れている時に、今すぐ、即座にステージに放り出されたら?もちろん焦ってうまくいかないでしょう。
では待ち時間を充分に取れば良いのでしょうか?緊張状態で過ごす時間は、たとえ5分でも苦痛です。あれこれ思考が巡って不安が継続・増大するからです。
ある程度時間をおく必要はある。ただし考え過ぎのループを止める必要もある。それを可能にするのが「ルーティン」です。
ルーティンのポイント
ルーティンが効く理由は、一定時間全く関係ないことをするからです。
先ほどの例では、絵を描く・塩をふる・数を数えるなど、歌を歌うこととは微塵も関係のないことばかりで、しかもちょっとややこしいんですよね。
簡単すぎると脳に不安を巡らせる余裕が残ります。意味のない作業に意識を向けやすくするためには、若干ややこしい動作を入れるとより良いです。
結局、なにをすれば良いのか。具体的な方法を紹介します。
考え過ぎを止める方法
おすすめは「呼吸」です。呼吸は人の自律神経に直接作用できる、強力な不安対策の手段であり、誰でも簡単にできるからです。
下の記事には、数ある呼吸法の中でも「不安対策に特化した」ものをまとめて紹介していますので、参照してください。
そして、下の記事はこの続きに当たるもので、セルフフォーカスをはじめ全ての考え過ぎを食い止めるための具体的な方法をまとめています。
参考サイト:D-Lab https://daigovideolab.jp/