相手を傷つけずにダメ出しする方法【心理学研究まとめ】
良い作品を作るためには、チームメンバーとの対話が欠かせませんよね。時にはメンバーにネガティブな意見、つまりダメ出しをする必要もあると思います。
しかし私の場合、メンバーにダメ出しすれば関係がギクシャクするばかり。言い方が完全に間違っていたのです。
良い作品を作るために言っていても、そのせいで人間関係に問題が生じれば、それどころではなくなります。本末転倒でした。
そのことに気づいた私が、どうすれば自分の伝え方を改善できるのか、色々調べた結果がこの記事です。
今回のテーマ
と言うわけで、今回は「チーム内のコミュニケーションを円滑にする方法」を紹介します。
特に、ネガティブなことを言い合う場合に、心を保てる方法を紹介します。バンド、オーケストラ、演劇その他、チームで制作に取り組む人には役立つ内容です。
この記事を読むメリット
この対話方法を実践したことで、相手を萎縮させることなく、適切に意見を伝えることができました。私の意見に対して、相手も対等に意見を返してくれるようになったのが大きな変化でした。
また、自分に対しての意見を気にしすぎてしまう人も、これらの考え方を持つことで適切に意見を受け入れることができます。相手も会話の達人ではありません。もし配慮のない言い方をされても、自分の中で処理してしまうのです。
つまりまとめると、この対話方法をグループ内で共有しておくことで、各々の会話のストレスが減り、各々が本来やるべきことに集中できるようになります。
本題
それでは以下の順でお話ししていきます。
- チーム内の良い関係性とは
- 適切な伝え方
- あくまでも主観であることを明言する
- 話の最初に、話の意図を言う
- 相手の人格否定ではないことを明言する
- 適切な聞き方
- 事実と評価を分ける
- ネガティブなことを言われたら、すぐに相手のいいところに目を向ける
- 相手から発せられたダメ出しがそのままゴミ箱に入るところをイメージする
- システム化する(苦手を治す努力をしない・させない)
チーム内の良い関係性とは
そもそもチームにおける良い関係性とはどんな状態でしょうか。なんでも言い合える?一致団結している?目標が明確?色々ありますよね。
ひとつ確かなのは、スムーズな意思疎通ができる状態が、全ての基盤になることです。チーム内でスムーズに会話するためには、「心理的安全性」を保つことが必要不可欠です。
心理的安全性とは
チームの中に不安や恐れがなく、自分らしい本来の自分でいられること。突飛な発言をしても、「お前はダメだな」「できないな」などと批判されないという安心感があり、自分が理解され受容されていると感じられる。誰かの顔色を伺う必要がなく、チームメンバーが必要のない力みを感じないで済む状態。
荻野淳也著『MINDFULNESS マインドフルネスが最高の人材とチームをつくる』かんき出版
これから紹介する対話方法は、この心理的安全性を保つための技術的な方法論です。 まずは形から入って、だんだん慣れていきましょう。
伝え方
- あくまでも主観であることを明言する
- 話の最初に、話の意図を言う
- 相手の人格否定ではないことを明言する
ひとつずつ解説していきます。
あくまでも主観であることを明言する
「ここはもっとこうした方がいい」というような意見は、「これが正しい」と押し付けるように感じられてしまうので、”反論”が生まれやすい言い方です。
強いこだわりを持っている人同士の場合、これでヒートアップして感情的にぶつかってしまうパターンが非常に多いです。
そこで「あくまで私の主観だけど、ここはもっとこうした方がいいと思うんだ。どう思う?」とすれば、相手は安心して自分の”意見”を話すことができます。
話の最初に、話の意図を言う
「ちょっと相談なんだけど」「提案なんだけど」のような前置きをすることで、意図しないニュアンスで伝わることがなくなり、相手が話を理解しやすくなります。
少し言いにくいことを言う場合は特に必要で、「ここを改善したいからお願いすることなんだけど」のような、
なぜそんな話をするのか、その話をすることでどうしたいのか。という部分を共有すると、相手を戸惑わせたり、心配させずに伝えることができます。
相手の人格否定でないことを明言する
私たちは、自分の「言動」が否定されると、「自分自身」が否定されたと感じてしまいます。
同じく「演奏がうまいかどうか」と「その人が素晴らしい人か」は全く関係がないのに、混同してしまいます。「テンポすら守れないなんて私はなんてダメなんだろう」みたいな感じです。
そこで「あなたのここがうまくいってないから話すけど、あなたの性格や人間性を否定するものじゃないことは分かってね。あくまでも起こった問題に対してできることを考えたいんだ」ということをきっちり明言してから言うことで、変に相手を傷つけることはなくなります。
聞き方
- 事実と評価を分ける
- ネガティブなことを言われたら、すぐに相手のいいところに目を向ける
- 相手から発せられたダメ出しがそのままゴミ箱に入るところをイメージする
事実と評価を分ける
あなたが感じていることの中で、客観的事実と、あなたが判断していることを、分けて考えます。
たとえば、私の場合ドラマーなので、演奏中にメンバーから「ドラムそこ違う」と怒鳴られたとしましょう。
この場合、「そこ違う」と言われたことは事実ですが、”怒鳴られた”と言うのは単なる解釈です。純粋に演奏中だったから”大きな声で言った”と考えられます。
また、その出来事と同時に、”周囲のメンバーから一斉に睨まれた”としましょう。
これも、演奏中の発言で反射的に目線を向けただけで、全員が悪意を持って睨みつけたとは限りません。
この、事実と評価の分別は、めちゃくちゃ難しいです。出来事と感情を切り離す作業なんて普通しないですもんね。
ネガティブなことを言われたら、すぐに相手のいいところに目を向ける
人はネガティブな言葉に引きつけられ、それしか考えられなくなります。危険を見つけて対処するための本能なのですが、現代では役立ちません。
この本能を断ち切って前向きな対処をするために、意図的に「いいとこメガネ」を利用します。「ムカつく。でもいい靴履いてる」とか「性格悪いけど、肌きれいだな」など無理やりいいところを見つけます。
そうして一旦置いてから、落ち着いて自分の意見を話します。すると、自然と相手に敬意を持って話すことができるのです。
普通ならイライラを相手にぶつけ返してしまい、ヒートアップしてもおかしくないところですが、初期段階で鎮火させることができるのがこの方法です。
相手から発せられたダメ出しがそのままゴミ箱に入るところをイメージする
これは、「人格否定でないことを明言する」と同じ発想のもので、自分に対して言われたことと、自分自身を分けて捉えるためのものです。具体的にはこのようなイメージトレーニングをします。
- 自分がゴミ箱を持っているところを想像する(体からできるだけ離して持っているイメージ)
- 相手からの発言が向こうから飛んできて、それをゴミ箱でキャッチするゲームをする
というものです。実際その場でイメージするのは難しいかもしれないので、帰宅後に一人でできるバージョンも紹介します。これはイメージするのではなく実際にできる方法です。
- その日言われたネガティブなことを紙に書く
- その紙をクシャッと丸めて、遠くに置いたゴミ箱に投げる
- 入るまでチャレンジする
これは、ゴミ箱に入る頃には意識が少しそれているので、批判を正面から受けすぎないようになります。一発で入ったら入ったで、「やった!」と意識がけっこうそれます。
システム化して対策する
ここまでは、言い合うことを前提にしてきましたが、相手が苦手としていることは、何度ダメ出ししても改善されないことが多々あります。そもそも、相手にあれこれ指図して、相手を変えようとすること自体が不毛なのかもしれません。
最終的には、必ずシステム化することによって改善させる方法を考えてください。
いつも何も発言しないメンバーがいた場合。「大事な会議なんだから、何も言わないのは良くない!何か言ってよ!」とかではなく、「会議では一人3分ずつ意見を言う時間を作り、定期的に回すようにしよう」
いつも遅刻するメンバーがいた場合。「ズボラだな!アラーム20個かけとけよ!」とかではなく、「集合時間を30分く伝えよう。遅れても大きな問題がなかった場合は、必要以上に言わないようにしよう」と言うような感じです。
苦手を直す努力よりも、得意を伸ばす努力をしよう
それぞれ苦手なことは必ずあるものですが、それを直す努力よりも、自分の得意なことをより伸ばす方向へ努力しましょう。
苦手なことによって問題が起きている場合は、根性論で向き合わずに、システムを作って苦手をカバーできる仕組みを考えましょう。
まとめ
伝え方を変えるのには時間がかかるかもしれません。そしてそれ以上に、聞き方、考え方を変えるのは非常に難しいと感じられるかもしれません。わかります。
私が実践してみて一番簡単に取り入れられたのは、「あくまでも主観であることを明言する」です。何か意見を言うときに、とりあえず最初にこれを言っておくだけでOKです。
まずはその一つだけから初めてみるだけでも、大きく違いが出てきます。少しでも改善したいなら、試す価値はあります。